人事労務トラブル110番
ビジネスシーンでありがちなトラブル事例をドラマで再現。
企業経営上避けることの出来ない問題を解決するために必要なさまざまな法律知識をSRアップ21の社会保険労務士が解説しています。
人事労務トラブル110番 Vol.5
収録内容紹介
第1話 退職した元社員が2年間の残業手当を請求してきた
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前月退職した社員Fが内容証明郵便で、在職中の残業手当差額として二年間分、約150万円を請求してきました。
E社が無視していたところ、元社員Fが経ち空き人2名を帯同して会社に乗り込んできました。
他の社員がいる手前、残業手当の話をしたくなかった社長は、近くの喫茶店に行き、「今日は忙しいので明日にしてくれ」と言って、元社員Fに2万円を渡しました。
次の日、E社の社長と専務(社長の弟)が約束した面談場所の貸会議室に行くと、社員Fと立会人というものが4人いました。
「労働基準監督署に聞いていろいろと再計算したら、頂かなければならない賃金の不足額が250万円になりました。
また、在籍社員にも”法律はこうなっているんだよ”と話をしようと思っています。」と元社員Fが口火を切りました。
E社の社長と専務は震え上がってしまいました。
第2話 社員への損害賠償請求はどこまでできる?会社の管理責任の限界は?
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Y社の営業部には、勤続10年のE社員がいます。
顧客である飲食店関係の営業を行っていますので、人当りは良いのですが、こと売掛金の回収については問題が多いお人好しタイプの人物でした。支払期日を過ぎても代金を支払わない顧客に催促・回収業務をやらせると、相手の言い訳に同調する始末で、なかなか埒があきません。何回か専務が後始末をしていましたが、結果的に債権が焦げ付いた時も多々ありました。
先日、集金業務から帰ってきたE社員が青い顔をしていたので、同僚が理由を尋ねてみると、「何度電話しても代金を振り込んでもらえないので、お店に行ってみたら、お店が閉鎖されていた。どうしよう・・・」ということでした。
これまで、この顧客の状況をE社員に何度も確認したのですが、その度に「来週まで待って欲しいそうです」「もうすぐ振り込むそうです」という返事ばかりでした。専務は、かねてからE社員には”集金能力がない”と思っていましたので、「この仕事ができないなら、できないと言えばいいのだ。この損害をどう弁償してくれるのだ」とE社員をなじりました。
次の日、E社員は退職届を提出しました。社長は気が進みませんでしたが、専務はE社員の不始末によって生じた会社の損害金すべてを算出した結果、E社員の退職金から控除することにしました。
第3話 職場復帰したいのですが・・・え?やめるんじゃないの
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3ヶ月ほど前のことです。N者経理部のK子さんの様子がおかしくなりました。急に笑っているかと思うと、急にふさぎ込んだり、また、遅刻や欠勤も多くなりました。見かねた専務が自宅に連絡して病院に行くように両親に伝えたところ、「K子は会社のせいだと言っていますよ。とりあえず、しばらく休ませますから・・・」と嫌な感じでした。
専務が社長がいろいろと話し合った結果、すぐに解雇できないことから、特別休暇として2ヵ月を設定し、これで職場復帰できなければ退職してもらう、ということになりました。このことをK子の母親に伝えると、「わかりました。早く職場復帰できるようにしますから、会社も職場の環境を良くしておいてくださいね」と、またまた感じの悪い対応でした。
その後の連絡ではK子は「パニック症候群」と診断されました。そして、休職期間の満了する2週間前にひょっこりと会社に現れ、「もう大丈夫です。来月から出社しますから!」と言って帰りました。
慌てた社長と専務。 「本当に大丈夫なのかな。経理部の他の社員たちは嫌がっているようだし・・・不安を抱えるよりK子には辞めてもらうしかないかなぁ・・・」
第4話 それってセクハラじゃないですか? いいえ、個人的な業務指導です!?
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今日も社長とE子は業界の会合ということで一緒に外出です。営業や会合など何かにつけて、“E子は社長の秘書”のように社長に連れ出されています。E子自身も「秘書じゃないんだけどなぁ…」と腑に落ちないのですが、社長と一緒にいると食事をごちそうになったり、おみやげを買ってもらったりするので、今のところ「まぁいいか」とさほど抵抗感がありません。一方、E子とぼぼ同期の女性社員たちは、E子からいろいろと話を聞いているので、多少羨ましがったりするものの、不公平感は感じていませんでした。
しかし、徐々に社長の行動がエスカレートしてきたのです。E子と一緒に英会話教室に通ったり、夜の食事も共にしていることや、E子の給与が他の社員よりも“高い”ということが知れ渡るようになってしまいました。そうなってくると、俄然他の社員たちの反応が違ってきました。「私たちにも食事手当を支給してください」「社内であまりべたべたされると気分が悪い」「給与の査定に不公平感がある」「セクハラじゃないか…」などという不平不満が直接に、また、風の噂で社長の耳に入ってきました。ある朝のミーティングの時です。「社内で変な噂があるようだが、E子君だけ特別扱いをしているわけではない。私の補助者が必要だから、私の仕事関係を知ってもらうつもりで個人的に業務指導を行なっているだけです。何もやましいところはない」と社長が開口一番話を始めたところ、「E子はおしりを触られたと言っていましたよ」と言う声がして、社員たちが一斉に笑い出しました。