第34回 (平成16年12月号)
“職場復帰したいのですが…”
え?やめるんじゃないのか!?
“職場復帰したいのですが…”
え?やめるんじゃないのか!?
SRアップ21広島(会長:守屋 薫)
相談内容
3ヶ月ほど前のことです。N社経理部のK子さんの様子がおかしくなりました。急に笑っているかと思うと、急にふさぎ込んだり、また、遅刻や欠勤も多くなりました。見かねた専務が自宅に連絡して病院に行くように両親に伝えたところ、「K子は会社のせいだと言っていますよ。とりあえず、しばらく休ませますから…」と嫌な感じでした。
専務が社長に報告すると、「K子は入社2年未満だから休職はできないしなぁ…しかし、“会社のせい”と言われても困るし…どうしたものかな」とはっきりしません。いろいろと話し合った結果、すぐに解雇できないことから、特別休職として2ヶ月を設定し、これで職場復帰できなければ退職してもらう、ということになりました。このことをK子の母親に伝えると、「わかりました。早く職場復帰できるようにしますから、会社も職場の環境を良くしておいてくださいね」と、またまた感じの悪い応対でした。
その後の連絡でK子は「パニック症候群」と診断されました。そして、休職期間の満了する2週間前にひょっこりと会社に現れ、「もう大丈夫です。来月から出社しますから!」と言って帰りました。
あわてたのは、社長と専務です。「本当に大丈夫なのかな、経理部の他の社員たちは嫌がっているようだし…不安を抱えるよりK子にはやめてもらうしかないかなぁ…」
相談事業所 N社の概要
-
- 創業
- 昭和48年
- 社員数
- 31名(パートタイマー3名)
- 業種
- 建設機械のリース業
- 経営者像
兄弟で会社を興して30年になるN社は、中小建設会社相手に建設機械や仮設材料のリースを行っています。多少の借金はあるものの、順調な経営状態といってもよいでしょう。その理由のひとつは、兄弟仲が良いことがあげられます。これまでも、何かにつけて相談しながら解決策を講じてきました。兄が社長(63歳)で弟(60歳)が専務です。
トラブル発生の背景
原因はともかく、昨今問題の多い社員の精神障害に関する対応とフォローという知識がN社幹部には不足していたようです。どうも厄介者扱いしているような感じも受けます。このような状態でしたので、K子の職場復帰に対しても、不安ばかりが増幅してしまいました。やる気の戻ってきたK子を解雇したことが、後々どういった結果になるのか予想できるはずもありません
また、N社では、普段から社員の変化に気をつける、という対策をはじめ、社員の健康、メンタルヘルスケアへの取り組みがなされていなかったことも問題といえるでしょう。
経営者の反応
N社がK子の職場復帰を認めず、休職期間満了時に解雇したことから、K子の両親は激怒しました。「会社の判断で病気が治っていないとか、他の社員が迷惑がっている、とは、いったいどういうことだ。K子は医師の診断書も提出しているじゃないか…」「事情はわかりますが、私ども弱小企業では、仕事をしながらお嬢さんに配慮する余裕もありませんし、また、再発されたら…と思うと、無理して当社に復職せずに環境を変えられたほうがよろしいと思うのですが」と専務が応対します。
しかし、もともとの原因が会社にあると思っているK子の両親は引き下がりません。「弁護士のところへ行く」とはき捨てN社を後にしました。
社長と専務は顔を見合わせ、「俺たちも相談先を探すか」と意見が一致しました。
弁護士からのアドバイス(執筆:山下 奉重)
N社は、K子さんを解雇したということですが、解雇は、使用者による労働契約の解約となります。使用者が労働者を解雇する場合については、労働基準法第18条の2により「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と定められ、この条文は平成15年の改正法により成立して、平成16年1月1日から施行されています。この法改正は、判例上確立された解雇権濫用法理を明文化したものです。(日本食塩製造事件最高裁二小判昭和五〇・四・二五、高知放送事件最二小判昭和五二・一・三一労判二六八号一七頁)
まず、解雇の合理的理由についてご説明しましょう。
解雇の合理的理由は、次の四つに大別されます(菅野和夫労働法六版四五九頁以下) 。 |
1. | 第一は、労働者の労務提供の不能や労働能力、または適格性の欠如・喪失です。これは、労働者が労務の提供ができない場合、あるいは勤務成績・勤務態度の著しい不良や適格性の欠如などをいいます。 |
2. | 第二は、労働者の規律違反行為です。業務命令違反や職場規律違反などで、本来懲戒処分の対象となるような場合です。例えば配転命令などの重要な業務命令違反、横領背任などの不正行為、上司・同僚や取引先に対する暴言暴行などの非違行為をいいます。 |
3. | 第三は、経営上の必要性に基づく理由による場合です。事業不振などによる使用者の経営上やむを得ない事情に基づくものです。いわゆる整理解雇の場合などがこれにあたります。 |
4. | 第四は、ユニオン・ショップ協定によるもので、これは、使用者と労働組合がユニオン・ショップ協定を締結している場合、その労働組合の組合員が除名されたり、脱退した場合に、ユニオン・ショップ協定の解雇規定に基づき使用者が解雇する場合です。 |
以上の合理的な理由が存在しても、解雇の正当性が認められるためにはさらに、社会通念上の相当性が必要です。この点につき、前記第一から第三の事由については「裁判所は、一般的には、それら事由が重大な程度に達しており、他に解雇回避の手段がなく、かつ労働者の例に宥恕すべき事情が殆どない場合にのみ解雇相当性を認めているといえよう 」(菅野前掲四六〇頁)とされています。このことは、就業規則の解雇事由に該当したとしても同じことです。
解雇権の濫用と法律効果
本件の場合、K子さんが労働提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失といえるかどうかが問題となるでしょう。K子さんは、病気で休職して治療にあたり、休職2週間前に「もう大丈夫」ということで、「来月から出社します」と労働意欲を示しています。「K子は、医師の診断書も提出しているじゃないか」ということですから、就業可能な診断と就業の意欲があるといえるでしょう。N社としては、K子さんの病気の回復状態などを本人や診断書等で確認し、職場のメンタルヘルスに注意して、K子さんを職場復帰させるケースだと思います。
パニック症候群・パニック障害は、パニック発作として特にこれといった誘引もなく突如として、動悸、息切れ、めまい、ふらつき、窒息感、吐き気、ふるえ、発汗、しびれ、紅潮、胸部圧迫感、そして死の不安、発狂不安、何かしでかす不安におそわれる症状があらわれ、これまで心因的と考えられていた発作も実はかなり生物学的基礎をもった病態であると考えられるようになったということです。(医学大辞典南山堂一六八四頁参照)そして、その原因は、仕事の疲労や仕事上の精神的ストレスなどが引き金となるといわれています。万が一、K子さんの病気が業務上傷病と認められる場合には、労基法第19条の解雇制限の適用があります。そうでなくても本件の場合は、解雇の客観的合理的理由も社会通念上相当でもなく、解雇権の濫用として解雇は無効になるでしょう。解雇が無効であれば、労働契約関係はそのまま継続しています。K子さんの両親は弁護士のところへ行くということですから、弁護士から連絡があるか、あるいは「労働契約上の権利を有する地位」の確認を求めて裁判(本案訴訟)を提起され、またこれに先立って「労働契約上の権利を有する仮の地位を定める裁判(仮処分)が提起されるでしょう。解雇無効となると解雇を行った使用者には、解雇による労働者の就労不能につき原則として「責ニ帰スベキ」事由があるので、労働者は解雇期間中の賃金請求権を失わないのです(民法五三六条)。従って裁判で賃金の支払いを求められることになります。
また、解雇権の行使が濫用ということになれば、不法行為として使用者に損害賠償義務が生じる場合があり(福岡地裁小倉支部判昭和五二.六.二三労民二八巻三号一九六頁菅野前掲書四六六頁)、使用者に故意・過失のある限り労働者の雇用を保持する利益や名誉を侵害する不法行為となります。ただし、権利濫用たる解雇が原則として不法行為になるというわけではありません。N社は、このようなことを十分に理解して、「解雇」の問題を考えなければなりません。本件が不幸にして解雇権の濫用となり裁判になれば、訴訟上の和解などで妥当な解決を見つけることになりそうです。そうなる前に、社会保険労務士のアドバイスをよく聞いて、円満解決の道を探ることが先決でしょう。
社会保険労務士からのアドバイス(執筆:日南田 悟)
まず、本件のK子さんと両親が「パニック症候群」は会社が原因であると主張していることについてですが、業務に起因するストレス等で精神障害が引き起こされたと因果関係が証明されるかどうかは、発病前の半年間に業務による強いストレスがあったこと、業務以外のストレスや個人的事情での発病ではないこと、既往症が無いこと等の厚生労働省が示した認定基準を満たすことが必要であり、要件を満たせば労災保険から給付を受けられます。
ただし、その病気が業務によるものか、業務以外のストレスによるものかの判断は難しいため、とりあえず、K子さんの勤務状況や職場でのトラブルの有無等の調査を社長にお願いするとともに、もしも、業務との因果関係が立証され、N社が安全配慮義務に違反していた場合には、損害賠償責任を負うことも想定し、今後の適正な労務管理の必要性も含めて、以下のアドバイスを行いました。その上で、再度K子さんと話し合いの場をもち、解雇の撤回を申し入れる予定です。
1)休職規程について |
(1) | 休職とは、私傷病等を主として従業員側の個人的事情により相当長期にわたり就労を期待できない場合に、従業員としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除して就労させない特別な扱いをいい、公務員の場合は休職について法律上定めがありますが、民間の場合は休職の定義や期間の制限等について法律上定めがありません。 N社の就業規則では「休職期間が満了しても復職できないときは、退職とする」旨が規定されていますが、これは一般的に定年の場合と同様、労働契約が自動的に終了する旨が定められているものと考えられ、あらためて解雇予告等の手続きは要らないと考えられていました(東京地裁昭和30年9月22日判決)。 しかし、最近では「従前の職務を支障なく行いうる状態に達していない場合でも、当人に適切なより軽易な業務が存在する場合には、使用者は復職を拒めない」(大阪地裁平成11年10月18日判決)という方向に変わってきています。 |
(2) | N社が特別措置として、入社2年未満のK子さんについて2か月の特別休職を設定していますが、N社の休職の規程に該当しないのであれば、その規程の中でK子さんにとって不利にならないように扱うべきだったと思われ、今回K子さんに限って行った特別休職の措置は、その場しのぎであり、合理的な根拠がない(就業規則に基づいていない)ため無効と判断されるケースと思われます。 今後も入社間もない社員が病気等により長期欠勤する事態も考慮に入れて、就業規則の休職規程を見直す必要があります(会社指定の医師による診察義務や休職と復職を繰り返す社員の扱い等)。 |
(2)病気を理由とする解雇の合理性 |
N社がK子さんの職場復帰を認めず、特別休職期間満了時に解雇したことについて、 |
(1) | 解雇事由が重大で労働契約上支障をきたすかどうか 就業規則では、普通解雇の事由として「傷病により職務に堪えないとき」と規定していても、病気がただちにこの規定に該当する訳ではありません。病気によってどの程度業務の遂行に支障があるのか、治療や回復訓練等によって業務に復帰できる可能性があるのか、といった点を具体的に検討する必要がありました。 |
(2) | 使用者が、配置転換や作業負担軽減の措置、休職制度を活用するなど解雇回避の努力をしているかどうか K子さんの業務内容が特定されていた場合には、適応可能な職務への配転の可能性はかなり限定されたものにならざるを得ないでしょうし、本人の意思を考慮する必要もあります。しかし、配転の可能性や作業軽減措置をまったく検討せず、休職期間内に職場復帰したK子さんに対してなされた今回の解雇は、正当な理由がなく、やはり無効となる可能性が高いと考えられます。配転が不可能な場合には、規定の傷病休職制度を利用すべきであり、以上のような措置をとってもなお業務遂行に堪えない場合に、はじめて解雇事由に該当するといえます。 |
(3)職場におけるメンタルヘルス対策 |
現在、多くの職場でメンタルヘルス(心の健康づくり)への対策が大きな課題となっています。それは、全ての労働者に起こりうる問題であり、様々なストレスが心の健康問題だけでなく、体の健康問題や労災・交通事故につながり、さらには自殺にまで至ってしまうこともあります。自殺者数は毎年3万人を超え、そのうちの約3割が勤労者という実態から、職場での予防対策が必要となります。 そこで、平成12年に労働省(現厚生労働省)から「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(メンタルヘルス指針)が発表され、メンタルヘルスケア(心の健康づくり対策)の原則的な実施方法が示されていますので、N社には以下の「メンタルヘルスケアの具体的な進め方」(図1)をアドバイスしました。 心の健康問題により、作業能率の低下や長期休業の発生等が起きた場合における労働力の損失は大きく、心の健康づくり対策は、企業の生産性向上及び安全確保におけるリスクマネジメントとしても推進する意義が大きいといえます。 |
図 1 メンタルヘルスケアの具体的な進め方 | |||
心の健康づくり計画の策定 | – | 使用者による | |
・ | 心の健康づくりの体制の整備 | ||
・ | 事業場における問題点の把握 | ||
・ | 必要な人材の確保 | ||
・ | 労働者のプライバシーへの配慮 | ||
・ | 労働者、管理監督者、産業保健スタッフへの教育研修 | ||
セルフケア | – | 労働者による | |
・ | ストレスへの気づき | ||
・ | ストレスへの対応 | ||
・ | 自発的な相談 | ||
ラインによるケア | – | 管理監督者による | |
・ | 職場環境等(作業環境、作業方法、労働時間等)の改善 | ||
・ | 個別の相談対応 | ||
・ | 部下の「事例性」の把握 (遅刻や欠勤が増える、作業能率が悪くなる、会話がなくなる等) |
||
産業保健スタッフによるケア | – | 産業医、衛生管理者等による | |
・ | 職場環境等の評価及び改善 | ||
・ | 個別の相談対応 | ||
・ | ラインによるケアへの支援 | ||
・ | ネットワークの形成 | ||
事業場外資源によるケア | – | 事業場外の機関、専門家による | |
(医療機関や地域産業保健センター等) | |||
・ | 支援サービスの活用 | ||
・ | ネットワークの活用 |
税理士からのアドバイス(執筆:石田 直純)
医学的にパニック症候群とは、理由もなく突然激しい不安に襲われ、特に体に異常がないにもかかわらず様々な身体的な障害をもたらす病気と言われています。この病気は青・壮年期の女性に多く見られ、過労や精神的ストレスが原因と考えられています。K子さんの母親の態度から察すると、パニック症候群に罹ったのはN社における職場環境等が原因であると思われているようですね。
まず、職場環境としてK子さんが携わっている経理業務という観点から当該事例を考察してみることにします。経理業務は、1年を1つのサイクルとして年度締日である決算日を目指し、日々業務を積み重ねていきます。決算日は、月次締日の延長線上にあり、月次締日は、日々の業務の延長線上にあるという仕組みになっています。したがって、各月の締日及び決算日前は非常に忙しい時期となっています。また、経理業務全般について言えることですが、全ての業務に期限があり、必ず期限内に完結する事が望まれるという特徴があります。通常、経理業務は経理部という部署で業務分担を行い、特定の人に負担がかからないような仕組みを構築することが望ましいのですが、中小企業の場合、必ずしも十分な人員が確保できていないというのが実状です。このような場合、特定の人に負担が過重にかかる傾向となり、N社の経理部においても同様の現象がみられました。K子さんのように1回目の経理業務サイクルを経験したばかりの2年目に対しても、過度の期待をしているケースがそうです。期待されて業務を行うことは励みになりますが、業務量等が個人の能力を超えているような場合には、過労や精神的なストレスを発生させることにもなり得ます。もしこのような状況が会社内にあったとすれば、母親が主張するようにK子さんがパニック症候群に罹った原因の一端を担ったことになると言われても仕方ないかもしれません。
経理業務は地味な業務ですが、仕事量はかなり多く、責任が重いという特徴があることを上司が認識したうえで、経験と能力を十分に考慮した適正な仕事分担という観点で、部下に対する目配りをする必要があります。
次にN社がK子さんを休職期間満了時に解雇した場合に発生するN社およびK子さんの税務上の処理等について考察してみます。 まず、N社の立場で考えてみますと、休職期間満了時に解雇ということですから、当然金銭の支払が発生すると思われます。K子さんに金銭が支払われた場合、会計上費用として経理処理されることになります。この会計上費用として経理処理された内容について、法人税法では損金になるかどうかの判断を行います。通常の費用科目の場合には、会計上の費用の額と法人税法上の損金の額は一致しますが、例えば、交際費、寄付金等については特別のルールに基づき損金額を決定する仕組みとなっており、また、貸倒損失、損害賠償金等の特定の費用科目については、税の公平という観点から個別に判断されることになっています。
今回、N社がK子さんに支給する金銭は、通常の費用としての退職金か個別に判断される損害賠償金のいずれかに該当することになります。
(1) 通常の費用としての退職金
休職期間満了時に解雇ということで支給される金銭ですから、所得税法30条1項で「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」と規定され、所得税基本通達30-5に「労働基準法第20条《解雇の予告》の規定により使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する。」と規定されていることから、一般的にはN社の経理処理は退職金となり、費用額と損金額が一致します。
(2) 個別に判断される損害賠償金
母親が主張するようにK子さんがパニック症候群に罹った原因の一端がN社にある場合には、その損害を補填するために支払われた金銭は損害賠償金として経理処理されます。損害賠償金については、その損害が法人の業務遂行上やむを得ず生じたものか、或いは、特定の者の故意または重過失により生じたものかにより税務上の処理が異なります。前者の場合には特別損失として損金処理され、費用額と損金額が一致しますが、後者の場合には、特定の者に対する債権として税務上損金算入されないことになります。
したがって、このような場合には、会社は損害賠償金額を特定の者に求償することになります。
次に、K子さんがN社より受け取った金銭についての税務上の処理について考えてみます。K子さんが受け取った金銭について、上記法人の処理(1)(2)の区分によりそれぞれの区分に応じK子さんの所得区分を判断することになります。この場合、以下の3区分になります。
(3) 退職所得
上記法人の処理で(1)のケースに該当する場合には、K子さんは退職所得として課税されることになります。
退職所得の場合、他の所得と分離され下記の算式で税額が計算されます。
{(退職金?退職所得控除額)×12 }×所得税率
退職所得控除額は勤続年数が20年以下の場合には、年40万円を乗じた額とし、20年を超える場合には、超えた年数に70万円を乗じた額を加算して求めます。
(4) 非課税
上記法人の処理で(2)の前者のケースに該当し、所得税法9条に規定する、心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料に該当する場合には、K子さんに支払われた損害賠償金の金額は、非課税となります。
(5) 一時所得
上記法人の処理で(2)の後者のケースに該当し、上記(4)の非課税に該当するもの以外については、一時所得として課税されます。
一時所得の場合、下記一時所得金額を他の所得と合算して税額を計算します。
一時所得金額= (損害賠償金額?50万円)×12
以上のように、税務上N社及びK子さんに対する課税関係はさまざまな形が考えられます。一般的には退職金として処理されるケースがほとんどだと思われますが、場合によっては、損害賠償金としての処理のように複雑なケースになる場合も考えられますので注意が必要です。
社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
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SRアップ21広島 会長 守屋 薫 / 本文執筆者 弁護士 山下 奉重、社会保険労務士 日南田 悟、税理士 石田 直純