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第121回 (平成24年2月号)

反社会的勢力?
「しかし…町内会のおつきあいもありますし…」?!

SRネット大阪(会長:木村 統一)

相談内容

最近は、取引契約の際に“反社会的勢力排除に関する覚書”の締結を求められることが多くなってきました。Y社も例外ではなく、多くのメーカーとこの覚書を締結するようになりました。「会社として、覚書を交わすのは当然であるし、また交わさないと仕事自体がもらえないということもある。しかし、本当に実効性をもったものとするためには、わが社の全社員について、同様の認識をもってもらわなければならない」Y社の経営会議でE社長の訓示が始まりました。居並ぶ幹部達は、神妙な顔つきをしてうなずきながらも、心の中では“またか…”という感じです。E社長の話が、全社員に誓約書を提出してもらうということで終わったところで、「メーカーや顧客との取引担当や決済権限者であればわかりますが、工場の社員からも誓約書をとるというのは無理があるのではないでしょうか…」と総務部長から質問がありましたが「わが社の社員たるもの、私生活においても、一切の反社会的勢力とは付き合わない、ということだ。どこにも無理はない」というE社長の言葉に他の出席者も異論を唱えるものはいませんでした。

翌日、誓約書の提出を求めた工場の社員から次々と質問が舞い込んできました。「町内会の役員を一緒にやっているのですが、とても良い人です…」「子供が同じ学年で、いつも遊んでいます…」「どうもその筋の方らしいのですが、はっきりとわかりません、もしも、そうだった場合はどうなるのですか…」総務部長が思っていた通りの展開となってしまいました。工場の社員は地元の者がほとんどのため、何がしかの接触はきっとあるだろうと思っていました。このことをE社長に報告したところ「少しでも付き合いがあるものは、付き合いをやめるか、退職か、どちらかを選択させろ!」これがE社長の回答でした。

相談事業所 組合員企業Y社の概要

創業
昭和51年

社員数
63名 パートタイマー10名

業種
機械器具製造業

経営者像

Y社のE社長は、かなり神経質な68歳、トラブルの発生を極端に嫌うあまり、社内にはいつも緊張感がみなぎっています。ここ数年は、コンプライアンス100%達成を掲げ、ますます社員達の指導に熱が入っています。


トラブル発生の背景

どこまでが反社会的勢力か、という線引きは非常に難しいところです。企業として、その境界を明確にしないと、社員は混乱してしまいます。
反社会勢力への対応を社員に一方的に強いるのではなく、企業が社員を守る、という目標も必要です。企業としてどうあるべきか、をもっと議論する必要があったのではないでしょうか。

経営者の反応

困った総務部長は、常務や専務に相談しましたが「社長がそう言うのなら仕方ないよ」「表面上、誓約書を提出してもらえば良いのだから、うまく説得するしかないよ…」と相手にしてくれません。
意を決した総務部長は再度E社長と対峙しました。「わが社に必要な専門的な能力をもった者が多数疑問を寄せています。少なくとも一般社員については、誓約書の文面を変えるなどの方法がとれないものでしょうか…」「それでは100%の目標は達成できない」とE社長。「しかし、大事な人材を失っては、わが社の浮沈にかかわります」と総務部長も引き下がりません。
「それでは、他社はどのような方法をとっているのだ。どこまでやればコンプライアンスが達成できたと言えるのだ。やり方を変えるなら、そのあたりの資料をもってきて、俺を説得してみろ!」E社長に怒鳴られた総務部長は、確かにその通りだと思い、E社長に謝罪した後、1週間の猶予をもらうことができました。「さて、どこに相談をもちかけるかな…」総務部長は、異業種間交流で知り合ったSRネットの社労士の名刺を探し始めました。

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弁護士からのアドバイス(執筆:吉田  肇)

「反社会的勢力」という言葉を定義した法律はありませんが、一般的には暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治的活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団及びこれらに準ずる者、またはその構成員を総称して用いられます。契約書などの反社会的勢力排除条項では、上記のような定義をしておくのが妥当でしょう。

近年、反社会的勢力を排除する取り組みが強められています。各都道府県における暴力団排除条例の制定や警察による取り締まりが強化されており、芸能界をやめざるを得なくなった某有名タレントの事件は、まだ記憶に新しいところです。

経済取引においても、反社会的勢力との関係が明らかな企業は取引から排除する契約が広まっており、今後はそうした関係が明らかになった企業は、社会的信用の失墜とともに致命的なダメージを受けることになりかねません。

また、蛇の目ミシン事件(最高裁平成18年4月10日判決)では、仕手筋から恐喝を受け、回収不能の多額の融資をするなどの利益供与をした役員に対する株主代表訴訟で、役員の善管注意義務違反、忠実義務違反による損害賠償責任が認められました。役員の責任も厳しく問われる時代になっているのです。

ここで、反社会的勢力による被害を防止するための5原則をご説明しましょう。

政府の犯罪対策閣僚会議が「企業による反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表していますが、その中で被害防止のための5原則を提唱しています。?代表取締役以下、組織全体として対応すること、?警察や弁護士など外部の専門機関と連携すること、?取引を含めた一切の関係を遮断すること、?有事における、民事・刑事の法的対応を毅然ととること、?裏取引や資金提供の禁止です。

?は、代表取締役が先頭に立って、反社会的勢力とは付き合わず、利用せず、不当な要求には屈しないという毅然とした姿勢を社内外に明らかにし、就業規則等の社内の規則、体制を整備、徹底することです。

例えば、就業規則に、反社会的勢力であることを認識しながら取引を行ったり、接待を行うなどの利益供与を行うことを禁止するとともに、社員が反社会的勢力に参加、関与することは禁止し、反社会的勢力であることを認識しながら交際することも、法律上、または社会生活上必要な場合を除き、原則として戒める規定を設けることが適切と考えます。また、社員に対してもマニュアルを作成配布し、本件のように社員が迷わないように、具体的にどのような点に注意し、行動すべきかをできるだけ具体的に説明すると同時に、担当取締役、担当者を決めて、社員の相談に応じることができる体制を作ることが望まれます。現場で攻撃を受けたり、不祥事を追及されて悩む社員を守るとともに、会社全体で毅然と適切に対処する必要があります。万が一、社内の規定に違反をした場合には、懲戒処分もあり得ますが、現実に懲戒処分をすべきか、あるいは、するとしてもどの程度の懲戒処分をするべきかは、慎重に判断する必要があります。懲戒処分をするには、客観的に合理的な理由があり、当該懲戒処分をすることが社会通念上相当であることを要するとされているからです(労働契約法第15条)。

このことについては、反社会的勢力であることを認識しながら、会社としての取引をしたり、利益を供与した場合は、懲戒処分を行うことに客観的合理的な理由があるといえるでしょうが、個人的な付き合いについては、企業秩序維持のための懲戒権が私生活まで及ぶのかという問題もあります。

しかし、たとえ私生活上の行為であっても、それが企業の社会的な信用や評価を棄損するような場合は、懲戒権が及ぶと考えられているので、反社会的勢力であることを認識しながら上記のような行為をするのは懲戒処分の客観的合理的な理由があるといってよいでしょうし、そのような行為を禁止した就業規則も有効と考えます。

ただし、懲戒処分は、本人の弁明をよく聞き、反省の機会を与えるなど、その情状に応じた適正な処分を選択すべきです(相当性の原則)。取引や便宜供与などについては、上司の監督が適切であったかどうかも問題となります。

また、本件で社員から意見が出ているような町内会の役員としての接触や、子供をとおしての付き合いなどは、たとえ親が反社会的勢力に属するような人物であったとしても一切断ち切るというわけにはゆかないでしょう。その場合には、社会生活上必要な接触は認めつつ、弱みを握られたり、つけ込むすきを与えないように注意する必要があります。もしも、事故や一種のスキャンダルを利用して不当な要求をしてきたような場合には、上司や担当役員に相談するよう社員に周知するのがよいでしょう。これは、取引において相手が反社会的勢力であることが判明し、弱みを握られたような場合も同様です。そして、必要があれば、原則の?にあるように、警察や弁護士等に相談することを躊躇せず、不当な要求については毅然と拒否し、法律上対応せざるを得ない部分については、必要な範囲内で専門機関(家)の協力を得て、対応すべきです。不当要求は、弁護士からの内容証明郵便での警告があれば、多くは止まりますし、止まらない場合は、次の法的手段を講じることが可能です。スキャンダルをもみ消すために利益を供与し、それに付け込まれて会社が存亡の危機に陥った例は枚挙にいとまがありません。

最後に、反社会的勢力を遮断するための予防策等はどうすべきかについてご説明します。まず、そのような当事者と分かった場合には取引を解消できるように、契約書に以下のような条項を入れておきます。?反社会的勢力ではないことを表明し、そのことを誓約する条項、?反社会的勢力であることが判明した場合、契約を無催告で解除できる条項、?契約を解除しても相手方(反社会的勢力)から損害賠償請求できない条項、?契約を解除するとともに、相手方に対して損害賠償請求できる条項です。

次に、すでに作成した契約書に上記のような条項が入っていない場合は、できる限り早急に取引を解消するようにします。契約上中途解約が難しい場合は、取引高を徐々に減らす、契約の有効期間が到来しても更新しない等の対応を検討します。ただ、契約内容を法律的に精査しながら最も適切な方法をとる必要があるので、弁護士等に相談をしながら検討するのがよいでしょう。

他にも、例えば会社によっては、株式の譲渡制限をしていない会社がありますが、反社会的勢力に株式が譲渡され、会社に不当な要求をされたり、乗っ取られるのを防ぐために、上場会社以外は定款に取締役会等の承認を要する旨の譲渡制限を定めておくべきです。

社会保険労務士からのアドバイス(執筆:桑野 里美)

これまでも何度となく取り上げられてきた「反社会的勢力」との関係についてですが、近年は金融機関が中心となってかなり強硬に排除の動きが強まっています。このような金融機関の強硬な対応は、中小企業を含めた全事業者にかなり影響があります。なぜなら、自社が反社会的勢力と何らかの関係を持つと判断された場合は、融資や証券取引が困難になるという問題が出てくるためです。

本件のようにY社社長が過敏に反応されるのも、無理のない話です。

さて、Y社はどのような対応を進めていけばよいのか、という問題ですが、まずは、基本方針を策定し明文化することが先決でしょう。弁護士の説明にある5原則を踏まえると次のようになります。

1. 反社会的勢力に対しては、倫理綱領・社内規定等に明文の根拠を設け、経営トップ以下、組織全体として対応します。また、反社会的勢力に対応する従業員の安全を確保します。
2. 平素から、警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等の外部の専門機関と緊密な連携関係を構築することに努めます。 
3. 反社会的勢力に対しては、取引関係を含めて、一切の関係を遮断します。 
4. 反社会的勢力による不当要求を拒絶し、必要に応じて民事および刑事の両面から法的対応を行います。
5. 反社会的勢力との裏取引は絶対に行いません。反社会的勢力への資金提供は絶対に行いません。

また、倫理綱領や行動基準に「(反社会的勢力との関係遮断) 私たちはいかなる理由があろうとも反社会的勢力との関係を絶つ断固たる決意のもと業務にあたります。」というような記述で、関係断絶を明文化しておくことが望ましいでしょう。

しかしこの関係をいつから、どの範囲までと解釈するのかがY社総務部長の悩みです。この関係を確認する時期と範囲、そのチェック方法に分けて検討してみます。

関係を判断する時期 
【入社時】
?内定通知書(内定取消事由)、入社時誓約書に記載
「本人が反社会的勢力に属している、(もしくは過去に属していることが判明した場合)採用(内定)は取り消されるものとする。」
「私はいかなる理由があっても、反社会的勢力に属したり、反社会的勢力との関係によって会社の業務に重大な支障を来し、また会社の信用を失墜させたりする行為をしません。」

この記載には前提になる考え方として、労働基準法第18条の2「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、 その権利を濫用したものとして無効とする。」というものがあり、慎重でなければなりません。つまり、内定(採用)取り消しには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当として是認」される必要があるということです。この判断からすれば、現在反社会的勢力に属している場合はともかく、過去の関係を理由にした内定(採用)取消は解雇権濫用となる可能性が高いと思われます。また、内定取消事由に記載されていなければ、そもそも内定取消(解雇)の前提を欠いてしまいますので、関係断絶を目指すのであればこの項目の記載は絶対に必要と言えます。

【入社後】
?懲戒規定に記載
反社会的勢力との関係断絶は服務規律に記載することが一般的です。
「反社会的勢力に属する事、または反社会的勢力と公私ともに関係をもつことを禁止する」と記載した上で、私的な関係をもつことが会社の信用失墜行為にあたる、またはあたる恐れがあると判断された場合は、服務規律違反として処分の対象とすることになります。

また、反社会的勢力に属していることを秘匿し、それが入社後判明した場合は重要な経歴詐称問題として処分の対象とすることが考えられますが、それを理由にする解雇となると、解雇権濫用法理に基づいて慎重に対応しなければなりません。

関係の範囲
従業員の私生活上の関係性の有無についてまで企業として関与し得るか否かは判断が難しいといえます。私生活上の非違行為として懲戒処分が可能なのは、会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると評価される場合に限られます。この事例の場合「町内会のつきあい」「子ども同士のつきあい」などが、会社の社会的評価に重大な悪影響を及ぼすとは考えにくいのですが、可能性が全くないともいえません。そのため、「会社の社会的評価、及び会社の業務に重大な悪影響を及ぼす反社会的勢力との関係については、公私ともに禁止する」という記載が限界ではないでしょうか。

関係の調査方法
前提条件として、前記の「会社の社会的評価、および会社の業務に重大な悪影響を及ぼす」可能性があり、従業員との詳しい関係調査が必要であると判断された場合でも、従業員に関する情報の収集には、人権に対する万全の配慮が必要です。

職業安定法第5条の4には「その業務の目的達成に必要な範囲内で求職者の個人情報を収集する」と定められています。また、個人情報保護法によって、個人情報の収集目的や調査方法は当然に規制させています。

過去の「反社会的勢力」との関係が、業務の目的達成に不利益を与えるか否か整理しなければならず、人権擁護の立場からも個人調査、反社チェックは非常に難しい問題だと言えるでしょう。現実的には、自社でチェックをするには限界があるため、一般的には調査会社等への委託するケースが多いようです。

反社会的勢力の範囲をどう捉えるのかについては、それぞれの会社において解釈にかなりの相違があります。いわゆる、暴力団のみを指す場合もあれば、カルト集団と呼ばれる宗教活動までを含める場合もあり得るわけです。一方で宗教の自由が保護されているにも関わらず・・・です。このように、この問題は非常に「概念的」な衝突があります。

そもそも「反社会的勢力」との関係排除は、企業防衛の観点からも必要不可欠な要請ではありますが、あまりに過剰に対応して、本来の目的から外れてしまい、個人としての基本的人権の侵害にならないように気をつける必要があるものと思います。

税理士からのアドバイス(執筆:得田 政臣)

暴力団を始めとする反社会的勢力が、その正体を隠して経済的取引の形で企業に接近し、取引関係に入った後で、不当要求やクレームの形で金品等を要求する手口がみられ、社会問題になっています。また、相手方が不当要求等を行わないとしても、暴力団の構成員又は暴力団と何らかのつながりのある者と契約関係等を持つことになると、暴力団との密接な交際や暴力団への利益供与につながりかねない危険性を孕むことになります。 

Y社としてこれらの根絶を目指すにあたり、特に不当要求等がある場合には会社の帳簿書類に不正のサインが見られるようになりますので、そのチェックポイント等を確認してみましょう。

<不当要求の類型と対応策> 
反社会的勢力による不当要求の手口としては「接近型」と「攻撃型」の2種類があり、それぞれにおける対策は次のとおりです。

接近型(反社会的勢力が、機関誌の購読要求、物品の購入要求、寄付金や賛助金の要求、下請け契約の要求を行うなど、「一方的なお願い」あるいは「勧誘」という形で近づいてくるもの)
→ 契約自由の原則に基づき、「当社としてはお断り申し上げます」「申し訳ありませんが、お断り申し上げます」等と理由を付けずに断ることが重要です(理由をつけることは、相手側に攻撃の口実を与えるのみで、妥当ではありません)。

攻撃型(反社会的勢力が、企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合)
→ 反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査します。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶します。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応します。

<不当要求のサインとチェック方法>
不当要求は最終的に金銭要求に発展します。金銭に絡む不当要求に関係した者は、概ね、今までにないほど資金に困窮するか、身分不相応に羽振りが良くなるか、いずれかの兆候が見られます。

資金に困窮している者の取る行動には?給与の前借り?会社からの資金借り入れ?カラ接待などがあります。?の有無は人事部や経理部?の有無は主に経理部に確認を取ることですぐに判明しますが、?は厳しいチェックの目が必要です。

カラ接待を発見出来るようにするためには、必ず「申請書」や「伺い書」を取るように習慣付けましょう。主に日時、相手先の名前、対応人数、目的を記載した上で領収書の添付も義務付けます。頻繁に出てくる店や複写になっていない領収書がある場合は、厳しくチェックします。定期的に経理部から「交際費」勘定の元帳を提出させチェックすると効果的です。

また身分不相応に羽振りが良くなった者はリベート等が絡んでいる場合があります。リベート等については正規のものと不正なものとがあります。

正規のものは「売上割戻」や「販売奨励金」その他「情報提供料」などが挙げられます。これらは法人税の計算上、一定金額が損金に算入されない「交際費等」と混同しやすいもので、租税特別措置法関係通達(法人税編)において細かく定義されています。

売上割戻や販売促進費等に該当したものは基本的に損金として取り扱われますが、著しく高額でその取引規模からみて明らかに原価割れを起こしてしまうような支払については税務調査で指摘を受けることがしばしばあります。また正規取引と見せかけて不正取引である可能性もあります。こちらも定期的に経理部から「交際費」勘定の元帳を提出させチェックすると効果的です。

不正なものはいわゆる「裏リベート」と呼ばれるもので、取引の中で埋もれがちですから発見するのには苦労します。これは得意先や仕入先からの謝礼金等を社員の個人口座に入金させる、あるいは現金渡しといった手口で、営業部または購買部で散見されます。裏リベートについては、低廉販売または高価買入の際によく発生しますので、財務諸表の粗利益率の推移を毎月確認するようにしましょう。通常よりも低下した場合には原因究明として、?取引高の多い業者の納品書や請求書で単価チェック?月別及び担当者別の取引原価率のチェック?接待交際の程度(癒着度)のチェックをしてみましょう。こちらも定期的に経理部から「交際費」勘定の元帳を提出させチェックすると効果的です。また本来不当要求に関係してはいけないはずの経理部においても不正に手を染めてしまう事例も少なくはありません。経理部においても金銭出納帳を定期的にチェックし「仮払金」勘定が頻発していないかなど、会社資金の着服防止に努める必要があります。

本件は、Y社社員について反社会的勢力との関わりにおいて、不当要求などに巻き込まれた時のサインを見逃さぬよう、そのチェックポイントを確認しましたが、これらの兆候が見られた時には、内容如何によっては背任罪などにも当たってしまうことがありますので、傷口が浅いうちに適切な措置が取れるよう会社のチェック体制(内部統制環境)を構築することが肝要です。

社会保険労務士の実務家集団・一般社団法人SRアップ21(理事長 岩城 猪一郎)が行う事業のひとつにSRネットサポートシステムがあります。SRネットは、それぞれの専門家の独立性を尊重しながら、社会保険労務士、弁護士、税理士が協力体制のもと、培った業務ノウハウと経験を駆使して依頼者を強力にサポートする総合コンサルタントグループです。
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SRネット大阪 会長 木村 統一  /  本文執筆者 弁護士 吉田  肇、社会保険労務士 桑野 里美、税理士 得田 政臣



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